2012年世界選手権エストニア大会最終日5種 そして…

2012年世界選手権エストニア大会最終日5種 そして…

降り続く雨は止むことはなかった。。。ほんの一瞬、上がったかのように思えたものの、数分でメガネのガラスの水滴は元通りになってしまった。

最終種目スピニング片手投げ距離

5種が最後の種目になったのは、この種目で全てが決まるからだ。世界選手権に出場するほとんどの選手たちは、総合種目に力を入れている。チーム総合も1−5種の4人の合計で争われる。それが、ICSFの世界選手権なのだ。参加できる選手がいるにもかかわらず、特定の種目だけで上位を狙うような国は、どこにもない。UKは今回はColinとAndyの他にJohnが参加していたので形的にはフライ種目、アキュラシー種目へも参加した。しかし、チームを作れるほど、残念ながら人数がそろっている訳ではないようだ。9種で優勝したVicentを有するスペインは、どちらかというとプラグ距離種目に力が入っているように見えるかもしれないが、彼らもしっかりチーム戦に参加していて、チーム戦初出場のエストニアに負けている。
チーム戦に参加できない悔しさは、実はSteveとHenryも持っている。かつての名手、Chris Korichは、ローカルのACAの大会にたまに顔を出す程度になってしまった。ポーランドからアメリカに移ったMateusも、まだ仕事が忙しいようでなかなかチーム戦参加が実現できていない。したくてもできない国もあるのが現実なのである。
また、この種目は、チーム戦だけではなく、個人総合の1−5、1−7、1−9と全ての総合種目に関わってくる。それが第5種目スピニング片手投げ距離種目なのだ。かつて、ドイツのWiebold(ビボー。いたずら好きの親父)は、5種について、こう語っていた。「1投目は“チームのため”。チーム総合に負けるきっかけを作ってはならないから。だから自分の勝負は2投目からなんだ」と。個人競技にしか思えないキャスティングという競技だが、世界選手権では国と国との競い合いという意味合いも含まれてくるからだろうか、やはりチーム戦での争いも、欠かせないものなのだろうと思う。

今回の5種。やはり予選と決勝と波乱に満ちた競い合いが繰り広げられた。女子、このところ成長が著しいポーランドのMagda Kuzaが予選を一位通過。風の恩恵もあったのだろうが、予選・決勝ともに70mを超えるところまでプラグを持っていった。遠くから見ていても、去年よりも回転はなめらかに、スピードは
上がっていることがわかる。そして何よりも、安定していることがわかる。幼いころからのMagdaを知っているからこそ、その成長ぶりに驚くばかりだ(どうやら今年は身長もついに抜かされたらしい。バンケットのときはヒールだったからか?)。しかし、上には上がいた。ここでも1投、WRのプレート近くまで
飛ばしてきた選手がいた。9種で一人100mを投げて優勝したSabrinaだ。決勝の点数はチーム戦には影響を与えない。決勝はあくまでも個人の順位を決定するだけだ。だからなのか、あるいは、今大会の最後の種目だからなのか。Sabrinaは勝負に出たのだろう。
4m以上もMagdaを突き放してポディウムの中央にたったのだった。

男子、こちらはさらに混戦が繰り広げられた。チーム総合を競うにはコートに入れるだけでは勝つことはできない。アキュラシーは100点を出すことが当たり前。いくら頑張っても、100点以上に得点を増やす
ことはできないのだ。しかし、距離種目は、差を広げられる。ましてや今回はほぼ真後ろからの追い風での進行。そして、最終種目という演出。当然、気合いの入り方も変わってくるというものだ。
予選で抜け出したのは、やはりドイツチーム。チームメンバーの2人が1位2位で通過。ともに80mを超える記録で、他のチームとの得点に差を付けた。そして、Jensは7種に続き、ここでも世界記録を打ち出した。しかし、負けてはいられないスロバキアチームが決勝で意地を見せた。Jan Meszarosの2投目は、風も良かったものの、90mに迫る89.40mで2位以下を引き離した。さらに3投目。前の記録には及ばないものの、84m台にプラグを運んだJan。「これは記録なのでは…」当時風速を担当していた自分の手元にあった風速計は、2台とも3m以下の数字だったのだ。そう、予選中にJensが出した世界記録があっという間に塗り替えられたのだ。そして、風速を担当していたこともあり、タックルコントロールのメンバーにも加わった。毎年見ているロッドとリール。見るからにガイドの直径もルールを超えていないことがわかる。どのガイドも両足がついている取り外しができないタイプのガイドだ。ラインの直径は、0.19mmと0.26mm。何の問題もない。もちろん、ロッドの長さもガイドの直径も、全て認定表に記入した。
「あの風で3m以下?本当か?考えられない」と、なかなか首を縦に振ろうとしない審判もいたが、手元にあった2台の風速計は、どちらも3m以下だったことに嘘はない。今回の計測方法で、他の種目と同条件で計測しているのだ。時間についてもOlafがビデオを撮っていたので調べればわかることだ。
蛇足ではあるが、国際審判講習を受けている際、審判がストップウォッチを押し忘れたり、特に決勝のときにどちらが先に終わったか、微妙な事例が発生した場合の話がでた。その際のThorgeirの一言は「大体の場合、日本人が誰かビデオを撮っているから、それにまず聞いてみるのがいい」と冗談まじりで話をしていたが、今回、その役をOlafが担ってくれたのだった。

世界選手権終了

というように、新記録ラッシュで幕を閉じた、今回の世界選手権。期間中ずっと全種目の審判をこなしただけでなく、4時間にわたる講義に加え2時間の実地講習、確認テストと、キャスティング漬けの1週間だった。選手で行った際の緊張感とは違う、気の使い方をしていたとも思う。中でも心がけたのは、Thorgeirが口を酸っぱくしていっていた「疑わしきは常にYes。選手の不利にならないようにすること」だった。それは実際の競技の審判をしているときだけではない。円滑に競技が進められるよう、競技と競技の間もなるべくコートの周りにいて、すぐに始められるように心がけたり、競技が始まる前は、念のためルールブックを再確認してみたり、と、いつも以上に過敏になっていたかもしれない。また、今年ほどSNSが浸透していた大会もなかっただろう。大会初日は記録が掲示された瞬間に写真をとってすぐにFacebookに投稿していた。優勝者が勝利を実感した直後の写真をアップしたりもしてみた。記録については、ドイツのMaikが、成績をまとめた直後にすぐに投稿してくれていたので、2日目からは「Maik、任せた。今日からは投稿しないからよろしく!」と、その場でお互い、指で「いいね!」をして確認しあった(なので、写真が中心になったのです)。3日目はさすがに雨のなか、更新することもままならなかったし、いろいろとありすぎて余裕がなかったことも事実です。

終わってしまえば、長かった大会期間もあっという間だったと思えてしまう脱力感。審判をしていると余裕がなくて、いろいろと話もできないか、と思いきや、いつも以上にいろいろなメンバーとじっくりと話ができたことは嬉しい限りでした。Kurt, Josef, Helmut, Thorgeir。審判をしていると逆に彼らとは話す時間が増えることがわかった。最も同じICSFのボードメンバーとして以前からの顔見知りということもあり、お互いが何を求めているかもわかっているからが故ということもあるのでしょう。ちょっとした合間に交わした会話の重みを感じます。Steveとは2年振りの再会で、積もる話が山積みで、話の内容が途切れることはなかったです。2週続けての世界大会で長く家を留守にしていたSteve。「こっちに来ていて何が恋しい?」とランチの時に聞かれ、「やっぱり刺身かな」と答えると、Steveは「自分は自宅のベッドかなぁ」としみじみ語っていたのが印象的でした。前述のチェコチームとの交流は、今回参加した中で、最も印象に残った事の一つです。テクニックひとつにしても教え方が完成されていて、そのノウハウの一部を教えてもらうことができました。その内容は今後、このWebサイトの中で解説していくことにします(超ショートホールのことです)。帰国後、教えてもらったことを早速試してみたところ、猿真似程度の理解でも、びっくりするくらいの違いを感じることができました。今の日本は、情報量が多すぎるのかもしれません。何がいいか、わからないままに迷走している感じがします(特に自分が、です)。
かつてThomas Maireに教えてもらったこと、を今一度改めてやってみるとともに、今回のチェコの秘密を加えて、ちょっと皆さんをびっくりさせたいと、考えています。
また、来年の開催地、UKのColinとAndyとはかなり突っ込んだ話もしました。「なんで今回は審判なんだ?」から始まって、あれ(リールのこと)やこれ(スプールのこと)やと。日本の選手、特に自分はかなりキャスティング・オタクだと思っていますが、いやはや、彼らにはかなわないと、マジで思った次第です。次元が違います。Andyとは黒いリーダーの件でも、一緒なってThorgeirに文句をいい、ルール通りの運営に引き戻したことでは、決定の判断が出たときに、がっちりと手を組んだことも印象的でした! 一方でFacebookにあげた飲み干したジョッキをAndyの前に並べて写した投稿写真には、翌朝奥さんに「そんな飲んでばっかりいて、何しに行ってるの?」と怒られたらしく、朝ごはんのときに「もう載せるなよ!」と釘をさしてきたりもしましたっけ。

と、いろいろとあった1週間。ここでもかなり書いてきましたが、まだまだネタはつきません。バラバラに書いてもわからなくなるだけなので、一度整理した形で、わかりやすくタグをつけた形で、まとめた物を載せていきます。自分でやってみないこととかもたくさんあるので、それも踏まえて。今回入手した道具の情報も、あわせてきれいにまとめますので、ご期待ください。

で、次の投稿は、祭りの後、の、バンケットに続くのでした。