第2種目フライ片手投げ距離種目

第2種目フライ片手投げ距離種目

日本で「キャスティングスポーツ」というと、まっさきに思い浮かぶのがこの種目、フライ片手投げ距離種目ではないでしょうか。

38gのフライライン

38gという重さのフライラインは、なかなかイメージできません。グレイン数では586グレイン。全長は15m以上。これをシューティングヘッドのようにフルラインを出した状態で投げます。ランニングラインと呼ばれるいわゆる道糸部分とフライラインの間には、ホールディングラインをセットします。ホールディングラインの全長は、短い場合は「ロッドの長さ+1ヒロ+30cm」長い場合はそれよりも1mくらい追加、でしょうか。この長さにもいろいろとノウハウがあります。ホールディングラインの太さは、5号前後。ランニングラインは1.5〜3号くらいのラインを使っています。芝生の状態がよくないときは、太めのランニングラインのほうが絡みにくいようです。またライントラブル等を想定して、なるべく明るい色のラインを選ぶに越したことはありません。

ロッドは専用ロッド?

20数年前の日本で、最初にキャスティングスポーツが流行りだしたときは、競技用ロッドの種類もいくつかありました。その頃は、Fenwick, SAGEといったアメリカからのブランクと、カプラス。カプラスも当初は、ダブルハンド用のランドロックをベースに作られたものが改良されて、Aシリーズがラインナップ。あとは風磊人さんがデザインしたKAZEのロッドというのもありました。吉見屋さんでもショップブランドのブランクなどもありました。しかし1990年代に入ってキャスティングスポーツの盛り上がりが下火になると、カプラスとGloomisしか手に入らなくなるという、選びたくても選べない時代となります。次の転機は、1994年から復活した日本人選手の世界選手権参戦です。そこから各国の選手と交流が始まり、世界で流通しているブランクが徐々に日本でも手に入るようになり、Gloomisの安定供給、DAM、Matchewsky、Talon等のブランクが入ってくるようになりました。2001年のWorld Gamesの前に、国際大会を盛り上げるためにと訪れたNowayのBente、SwedenのHenrik、Lars-Erikなどの影響もあり、徐々にキャスティングスポーツが盛り上がってくると、ブランクを作ってくれる日本のメーカも登場し、O-Rex、Anglers Republic等からもブランクが発売されるようになり、その後TSR、K-Bullet、K2、山鬼等からもブランクが出てきました。天龍、DAIWAもサンプルを作ったりしていたのもこの時期です。
競技専用ロッドが入手できない頃は、シーバスロッドやスチールヘッド用ブランクを輸入してルールにあわせてロッドを作ったりしたこともあります。ダイコーのシーバスロッドはなかなかいい感じに仕上がりました。今ならエギング用のロッドを改造する等するでしょう。昨日の記事の5種スピニング片手投げ距離用のロッドは、そのような改造をしながら組み立てられています。
そんな時代を経て、今の日本では、流通こそはしていないものの世界中のブランクが手に入る環境、だったりします。既に製造をやめてしまったメーカーもありますが、ヤフオク等のオークションやタックルベリー等の中古釣具店にもキャスティングスポーツ用の道具がでてきますし、新品でも海外からのブランクを入手することが可能です。アメリカだけでなくドイツ、UK、ニュージーランド、ポーランド等と、世界各地の選手達との強い絆があるJCSFだからこそ築けるネットワークがあります。現在流通しているブランクのリストも近々にまとめたいと考えています。

初めての大会出場

競技は投てき台に上がって行います。高さは50cm。アキュラシー種目のときもそうですが、台の上に上がるだけで最初の頃は緊張してしまい、いつものキャスティングができないのが普通です。また競技時間の5分間というのが、競技中は長く感じてしまうものの、終わってしまえばあっという間だったという、狐につままれた感のある5分間だったりします。計測は投てき台の前面中央からフライが落ちたところまでの距離を測ります。ラインは飛んでいるのだけれど、ターンオーバーせずにフライが手前に落ちてしまった場合は、その分だけ飛距離が短くなってしまいますので、きちんとリーダーをターンオーバーさせることも大切になります。

ショートストロークとロングストローク

1994年にドイツのThomas Maire選手が来日するまでの日本では、Steve Rajeffだけがお手本のようなものでした。1980年代に来日したSteveの影響をうけた後は、ショートストロークのキャスティングが主流でした。腰のひねりを使うSteveの動きに対して、その頃のショートストロークスタイルは体の前でロッドを振り、シュート時は体全体でロッドを曲げるような投げ方をしている選手が多くいました。それが1994年1995年に来日したThomas Maire、Michael Harterの2人の選手と、世界選手権を録画してきたビデオと、経験してきた選手たちからの話しが広まることで、徐々にいろいろなスタイルが広まっていくことになります。Thomasたちのスタイルを関西では「ドイツ投げ」と呼ばれていたようですが、海外でも大きく分けて2つのスタイル「Norway 流」と「Czech流」の2つがあるようです。Norway流はフォルスキャスト時の腕の位置が高いところを移動するのに対して、Czech流のフォルスキャストでは腕の位置は低めです。また立ち方にも違いがあり、Norway流は左足と右足の向きが正面に対して平行、同じ向きなのが、Czech流では右利きの場合は左足が正面なのに対して、右足は90度近く横を向きます。体のひねりを使いながらストロークの長さを稼ぐのがCzech流といえますが、もちろんCzechの選手にも手の位置を高いところで保持する選手もいますので、全員が全員同じスタイルで投げているわけではありません。このようなことも百聞は一見にしかず、こちらのYouTubeでご確認下さい。

こちらも参考になります。

練習時の注意

なれないヘビーな道具を使うと、必ず起こすのが腱鞘炎です。手首を痛めることが多いのもこの種目です。充分なストレッチと、無理のない程度での練習量を、特に最初の頃は心がけて下さい。最初の目標は「大会記録での50m突破」でしょうか。15mの競技用T38をフォルスキャストできるようになれば、50mの壁は目の前です。練習時であれば、あっという間に到達できる距離でしかありません。しかし、こと大会出場時の記録、となるとハードルがあがります。自らのプレッシャーに加えて、設営されたコートのコンディションにも左右されます。前の選手は追い風だったのに急に向かい風に変わってしまうことも、日常茶飯事です。与えられた5分間で50mを投げきること、自分との闘いでもあり、自然界との闘いでもあります(大げさすぎ?)。ぜひとも乗り越えていただきたいと思う次第です。