メジャリングの考察2017その2

メジャリングの考察2017その2

フライキャスティングのラビリンス(迷宮)のようなこの種目。実は分かってしまえば簡単な種目でもあります。

メジャリングの基本

メジャリングの目的は、ラインの長さ調節。バックキャストのときにグリップを持つ手の中指にフライラインを引っ掛けながらホールをし、その中指でラインを押さえたままフォワードキャストをすると、その長さ分だけラインを短くすることができます。ラインを長くするときは、その逆で、フォールしたときのラインを持ったまま、ロッド側の中指まで持っていくと、その長さ分だけラインを長くすることができる、のです。そのラインの長さを測る時に、ヒトヒロ分とか矢引き分とか、自分なりの長さを決めておいて、出したり引いたりするのです。
どれだけ足し引きするのか? 「ターゲットに向かって投げたときに、ロッドティップと手の位置と方の位置は一直線にしておくこと」とは、小さいときから刷り込まれてきたチェコから留学にきているMilosくんから昨年聞いた話です。このような体制でターゲットを狙った場合、グリップの位置は投てき台の前方約50cmのところまで伸びるかと思われます。そこでここでは50cm前に突き出した位置で固定した場合、どのようなメジャリングになるか、を解説していきましょう。

自分の道具をチェックする

1種で使うロッドは、柔らかめの2種用のロッドが多いでしょう。Gloomisでいうと、T36あたりが基本です。そのロッドをルールいっぱいまでの長さで使うと、300cmです。ロッドティップから出すフライラインは、ロッドと同じ長さなので、300cm。リーダーは、185cmを使うものとします。そうすると、これで785cmの長さになります。自分の場合、グリップは長めのものを使っていることもあり、バットエンドから中指までの位置が30cmでした。とすると、50cm前に突き出しても、バットエンドはその30cm後ろにあることになるため、先端に出ている長さは、755cmです。

グリップエンドから中指までの距離は実測30cm。最もこの写真は、お恥ずかしやラインがリールに絡んでいるトラブル中。

投てき台の上から投げるということ

下の図をご覧ください。Mac用のドローソフトで作ってみました。2つ上の写真を、1/100スケールで縮尺してみました。

グリップを持つ中指の位置からターゲットの中心までの距離のイメージ。縮尺換算すると、7.49m。

50cmの高さにある足下から8m先にあるターゲットの中心から、投擲台50cm分、腰より少し高いところで止めたとして1m分の、合計1.5mの高さのところから50cm手を突き出したところから同じターゲットまでの中心の長さは、7.492cm。縮尺を戻すと、7.49mになります。自分が使っている道具で同じことをすると、7.52mと、ほぼ同じ長さになります。つまり、投てきを始める前に準備したところで、No1のターゲットには届く長さのラインが出ている、ということを覚えておいてください。これから続く長さの調節については、わかりやすい爪先部分からの距離、で解説していきます。

13mの場合も同じく、高さによる誤差はほとんど発生していない。距離の誤差よりも高さと角度から生じるオーバーターンが問題になる。

競技の方法

ここからは実際の競技の手順に基づいて、説明していきます。バットエンドとリーダーとフライラインの接続部を重ね合わせて主審に見せて、ロッドから出ているラインの長さを確認してもらい、フライがついていることも確認してもらったら、そのフライを手に持ってスタートコールを待ちます。審判の「スタート!」の合図の後、まずは最初にフライラインをリールから引き出します。13mのターゲットに届く分だけだせばいいのですが、リールに巻いてあるラインを全部出してしまう選手もいます。自作スプールリールを使っている選手は、一度スプールを回しただけで勝手にスプールが回り全部のラインを出してしまうようにと、ベアリングを入れていたりします。
まず最初に狙うのはNo3のターゲット。その距離は「10.17m」。10.17m – 8.00m = 2.17m。この長さ分だけ長くしてあげればいいのです。自分のやり方は、110cmのメジャリングを2回入れています。右手でロッドを持っている場合は、バックキャストのときに右手の親指の付け根部分を額に当てて、左手をまっすぐ下におろした距離、がひとつの目安です。

本人の体格・身長によって、決めるポジションは様々。鼻の上、顎の下、頭のてっぺん。自分でやりやすいところが一番です。

その距離を測った後のフォワードキャストで左手に持っているラインを右手に渡して、次のバックキャストでもう一度同じ動作を繰り返します。そうすると、理論上はNo3の真ん中に当てられる必要十分なラインが出ていることになり、後はまっすぐ投げられれば真ん中にあたる、はずです。No3の次に狙うのはNo1。つまり同じことを「足す」のではなく「引く」やり方で繰り返します。バックキャストの時に右手の中指を通過させつつ左手でラインを引いて短くしていく動作を2回繰り返すと、元に戻ってNo1のターゲットを狙う充分な長さのラインが出ている状態になります。次はNo4です。No3までの調節の仕方は分かっています。No3からNo4までの長さ分だけ、足せばいいのです。その長さは137cm。目安は手を上下いっぱいに開いた状態です。No2を狙う場合は、137cmと110cmをそれぞれ1回ずつ引いて狙います。No5は、No4に戻したところから146cm足します。この動作を、決められた順番である3-1-4-2-5-3-1-4-2-5と、いかに効率よく正確に行うことができるかが、このドライフライラウンドの決め手になります。長さを調節する際に生じる数cmずつの誤差が、最後の方で大きな山となって出てきてしまうと、取り返しがつかなくなる。普段当たり前のようにできていたことが、試合の本番で緊張したがゆえに、いつもよりも止める位置が少しずれただけで、メジャーがずれてしまう、なんてことも日常茶飯事です。首を傾げながらメジャリングしている初心者のかたも、よくいらっしゃいます。まずはこの基本の動作を体で覚えてしまうこと、このラインの長さ調節を覚えることこそが、この種目が「釣りにも役立つ種目」たる所以です。「こんなぶっといロッドでドライフライなんて投げないって」とはよく揶揄されるときに聞くセリフです。しかしこんなぶっといロッドでもフォルスキャストしながらラインをさばけるようになってしまえば、#3〜#5くらいのロッドは楽に操れるというものです。
長くなりましたので、ウェットラウンド編は、明日に続きます。