8種マルチプライヤー正確度種目

8種マルチプライヤー正確度種目

「マルチプライヤーリール」とは今の日本では死語に近いかもしれません。直訳すると「両軸受けリール」です。投げることを目的としたこのタイプのリールの主軸は、バスフィッシングで使う『ベイトリール』でしょう。石鯛釣りや日本の鯉釣りスタイルでも使われていますし、遠投カゴ釣りでも使われています。船で使う方は「胴付きリール」という方もいらっしゃるでしょう。

20mまでの距離を正確に投げる

このリールの一番の難点は、最初に投げられるようになるまでの敷居が高いことです。投げ終えたあとにラインが出ていくのを止めないと、回り続けるスプールからラインが溢れ出して、いわゆるバックラッシュをおこしてしまいます。その状態を「バーズネスト(鳥の巣)」とは、良く言ったものです。そんな練習が必要にはなるのですが、そこの入り口についてはここでは割愛させていただいて、この種目のルールとポイントをまとめてみます。

タックル

スイングのスピードとロッドの反発のタイミングが絶妙なEPVS601。562はロッドが短くて強い分、そのタイミングが弱冠早い。どちらを好むかは選手次第

6フィート2ピースのML(ミディアムライト)アクションのロッドは、ベイトモデルよりもスピニングモデルの方が多く作られています

6フィート2ピースのML(ミディアムライト)アクションのロッドはスピニングロッドの方が種類が多い

釣りの道具に一番近い道具を使うという意味では、この種目が一番近いでしょう。とはいえ、バスフィッシングのロッドほど、種類が多いものもない、ということも事実です。その中からのおすすめとしては、トップウォータープラッギング用のロッド、です。トップ、といっても、ポップRなどの軽めのルアーを、チャッチャと引いてくる釣りではなく、ゆるゆるポトン&ウォーキング・ザ・ドックの釣り、のトップです。一昔前のトップ用のプラグといったら、5/8oz(18g)がひとつの基準でした。そこで紹介されていたような道具を使う、というのがイメージしやすいでしょう。6フィートのロッドで18gが背負えるロッド、が一つの基準です。これが入り口です。次にご紹介するのは、キャスティングの楽しさの「魔宮」への入り口です(笑)。
競技用のロッド、というのは、ここにも存在しません。どんな道具でもいいのです。とすると、固定観念を捨てて、使いやすいものを選ぶ…と、こうなる、というのが、スピニングロッドを使う、です。このことは、テーパーの魔術師・島津靖雄さんから教えてもらいました。島津さんとの出会いは、学生時代に遡ります。今でこそ大イベントとなったBasserオールスタークラッシックですが、その最初の大会が芦ノ湖で開催されたときに、プレススタッフとして島津さんのボートに同船したことがありました。10馬力限定ルールだったときに、確か25馬力のエンジンを持ってきてしまって、スロットル調整で10馬力と同じスピードしか出ないように設定した、とかいうことがあったんじゃなかったか、と。で、しばらくしてからフィッシングショーで島津さんに再会したときに、競技をやっていることや専用の道具がなくて困っている、などという話になり、だったら一度遊びにおいで、と誘われたのが、2000年ころだったかと。そして当時の勤務先アングラーズリパブリックにお邪魔したときに、使っている道具をお見せしつつ、ウチのだったらこれかな、と渡されたのが、エッジプライドのスピニングロッドEPVS601とベイトロッドEPVC562でした。そして駐車場の片隅で「まるで初心者か釣りを知らない代理店が作った広告」みたいに、スピニングロッドにベイトリールをつけて投げてみた所、601がドンピシャでした。このときはスピニングロッドだから、というよりも、18gを力を入れずにロッドのテーパーできれいに弾き飛ばして20mの距離を正確に投げられるブランク、として選ばれたのが、たまたまスピニングロッド用のブランクだった、だけのことで、他にもトラウトロッドとかシーバスロッドにも同じようなイメージのものがあったら「これ、試してみたら」と渡されていたかもしれません。しかし、まさにイメージ通りのロッドを一発で選んだ島津さん、すごい方だと、思わざるを得ませんでした。その後は、自分でも積極的にいろいろな「竿」で試すようになり、他のルアーロッドはもちろん、メバル用の竿、船釣り用の竿、投釣り用の竿等など、手当たり次第に試してきましたが、結論としては、バスロッドとして作られた6フィートでライト〜ミディアムライトのロッドから選ぶのが、アタリを引く確率が高いのでは、と考えています。エッジプライドの”パワー1”も参考にできます。
これはロッドのテーパーをきれいに使って弾き飛ばす投げ方の場合です。ロッド全体をしならせて低い弾道で飛ばすあてかたの場合は、5フィートくらいのちょっと短めのロッドが向いています。スイスのマーカスのスタイルです

6フィート2ピースのML(ミディアムライト)アクションあたりが丁度いい硬さです

逆に向いていないロッドは、ボトムフィッシング用でフッキング重視のタイプのバスロッドは硬すぎて難しいでしょう。もしそのようなロッドを持っていて、ティップが折れた、バットを踏んで壊した、というようなことになっていたら、スピニング正確度種目用に140cmくらいの長さのロッドに仕立て直して使うことができるかもしれません。

グリップはハンドルタイプ、ストレートタイプ?

スピニングロッドのグリップを無理やりベイト用にと、トリガー等を「盛ってみた」一例。この持ち方では親指の下部が開いていてバランスが悪い、という見本

正直これは、好みの問題、でしかありません。アメリカの選手はハンドルタイプを好んで使いますが、ヨーロッパの選手はストレートが主流です。もっとも、ヨーロッパの選手の多くにとって、この種目はおまけみたいなものなので、それほど力を入れていない、ということもあるかもしれません。個人的な見解では、手の大きさと持ち方の好み、で使い分ければいいと考えています。グリップを浅く持つのと、グリップを深く持つ、どちらが好みか、ということです。同じように、右利きの人が右巻きのリールを使って投げるときは、リールのハンドルは真上をむけていること、と言われてもいますが、これも実際は関係ありませんし、この種目が盛んなアメリカでは昔から、45度くらい傾けた状態がベスト、とも伝えられています。詳しいことは、次の記事に。

リール

リールについては、これこそ何でもいいです。オールドアメリカンなスタイルで、ダイレクトドライブリールを使うのもよし、スピニングリールのようにハイギア化して使う選手もいます。ダイレクトドライブリールのハイギア化、なんてマニアックなことをしている選手もいたりします(フライリールを自作するHenry選手)。ただひとつだけ言えるのは、軽いリールに分があるということです。ABUならば、5000番台よりも2500や1500、カルカッタなら200よりも50、ダイワのリールなら1516よりも1016など、小さいリールのほうが向いています。もちろん、大きいリールがだめなのではありませんが、より回数を投げ込むのであれば軽いに越したことはない、というところと、やはり扱いやすいのは軽いリールである、ということです。

ライン

ACA流にダイレクトドライブにPEをセットしてみた一例。水上での競技ではないICSFルールでは、あえてPEを選ぶ理由はない。

ラインはナイロンの8ポンドから10ポンドでいいでしょう。細すぎると切れやすいですし、太すぎると風の影響を受けやすくなります。視認性を高めるために、蛍光ラインを使う選手が多いようです。ダクロンやPEを使う必要は全くありません。トラブルを起こしたときに修復させるまでにかかる時間は圧倒的にナイロンのほうが簡単です。絡んだラインを直すのに時間を費やすよりも、一投でも多くなげる練習したいというものです。

投げ方

投げ方はオーバーヘッドキャストを基本から練習して下さい。まずはロッドにおまかせスタイルの投げ方のご紹介です。
まずロッドを持つときは、シェイクハンドポジション。握手をかわすときの手の位置を想像して下さい。遠くから来る人を大歓迎するような位置ではなく「小さく前にならえ」くらいの位置です。肘は軽く脇腹から離します。拳1つ分くらいか少し狭いくらいです。その状態でロッドをもって、目とプラグとターゲットが一直線になるように構えて、リストを固定したままテイクバックに入ります。手首は軽くひらいたくらいでしょうか。手首で跳ね上げるのではなく、手首は固定したまま、テイクバックしていきます。跳ね上げたプラグの移動に合わせるように固定したリストを開いていきつつ、プラグが上に上がりきる直前くらいのタイミングでフォワードキャストの動作に移行します。肘から先の腕を前に倒しつつ、開いたリストを閉じてプラグの重さでロッドを曲げていきバットが曲がって生じるパワーをティップ側に移動させてプラグを弾き飛ばします。自分で遠くになげようとするのではなく、ロッドの曲がりをきれいにつかって素直に反発させてやるのです。反発の瞬間にスプールをおさえていた指を離してやれば、プラグはまっすぐ正面に飛んでいきます。まっすぐプラグが飛んでいかないのは、左右にずれるのは、ロッドを真っ直ぐに振っていないからで、前後にずれるのはスプールを離すタイミングのズレが原因です。この投げ方はあくまでも基本中の基本です。力を入れずにロッドの反発力だけを活用してプラグを弾き飛ばす、ただそれだけのことなのですが、思うようにいかないのがこの競技の難しいところです。しかし、何度も何度も練習を重ねるうちに、たまにプラグが当たったときの「カーン!」という音の響きの気持ちよさは、堪えられません!

練習方法

練習方法としては、是非とも76㎝の円盤をベニヤ板を切ってつくっていただくことから始めていただきたいのですが、持ち運びも面倒ですので、何でもいいです、ダンボールを切って代用したり、お風呂マットを切って作ってでもかまいません。お風呂マットで作ったターゲットは、夜の練習のときに近隣住宅への音の配慮、という点からも、1つあると便利かもしれません。最悪でもペットボトルや空き缶、などを使って、狙って投げること、を心がけて下さい。釣りのときに岸や杭に向かって投げているときは、狙った所にピシピシ入る、ということはあるかもしれませんが、76㎝という一見大きな的に見える黄色い的に、なぜか最初のうちは当たらないものなのです。そして一番必要なものは、メジャーです。競技の場合は投げる距離が決まっているので、その距離から投げること、を体得してしまうのが上達への一番の近道です。いつも決まって練習する場所があるのなら、目印をみつけて記憶しておくことも役に立ちます。金網フェンスやガードレールなど、1人で練習するスペースには、わりとそのようなものがあったりするものです。

この種目が好きな種目ということもありますが、語り始めたら止まらない、状態になっていたりします。本日中の更新ができなくなるだけでなく、何ページ分にも渡る記事になってしまいますので、ここらで一度区切りをつけて、以下次号。